25.03.2021

クリムト『扇を持つ女性』が一世紀ぶりにウィーンで公開

グスタフ・クリムト(1862-1918)が死の前年に手掛けた『扇を持つ女性』。クリムトらしい正方形のキャンバスの上に、軽やかな色調で表現された“ウィーンの美”が、1920年以来初めて地元で一般公開されています。2021年3月25日~2022年2月13日

1918年。クリムト死去の直後に撮影されたアトリエの写真に、2点の作品が映っていました。一枚は未完の『花嫁』、そしてもう一枚が『扇を持つ女性』です。

最高傑作『接吻』をはじめとした世界最大のクリムト・コレクションを有するベルヴェデーレ宮殿オーストリア・ギャラリーでは、かねてより『花嫁』を展示していました。そして、このたび100年ぶりに『扇を持つ女性』が展示されることを記念して、ウィーン・モダンを率いた巨人クリムトの晩年の作品世界に焦点を当てた特別展を、2022年2月13日まで開催しています。

『扇を持つ女性』は、1917年に制作されたクリムト最晩年の作品です。細部をいくつか残したほかは、完成に近い状態にまで仕上げたものでした。上流階級の女性を描いた多くのクリムト作品とは異なり、この作品のモデルは無名のダンサーだとされています。

作品の主題はクリムトが生涯を通じて追求した‟ウィーンの美“。長い首と縮れた髪の毛がコケティッシュな女性は、肩を露わにし、扇で胸を隠して、自信にあふれた表情で前方を見つめています。その衣服と扇子、そして花と鳥が舞う背景からは、クリムトが好んだ東アジア美術の影響がうかがえます。

『扇を持つ女性』がウィーンで展示されたのは過去にたった一度、1920年の「クンストシャウ(総合芸術展)」でのことでした。その後1981年に東京、1992年にクラクフで一般公開されていますが、クリムト自身の生まれ故郷であるオーストリアでの展示は、一世紀ぶりとなります。

今回の特別展「扇を持つ女性:クリムト最後の作品たち」は、期間を前半・後半に分けて開催されます。

前半はテーマを「クリムト最晩年の未完作」とし、『花嫁』『アマーリエ・ツッカーカンドル婦人の肖像』『白い服の女』などと並んで、『扇を持つ女性』が展示されます。

10月から始まる後半では、さらに内容を充実させ、クリムトが日本をはじめとした東アジアの芸術に寄せた関心を検証し、その影響が認められる作品を展示します。

ベルヴェデーレ宮殿のプレスリリース