09.11.2025

『豊臣期大坂図屏風』国際視察交流会2025 in エッゲンベルク宮殿を開催

2000年代の初めにグラーツのエッゲンベルク宮殿で“再発見”された『豊臣期大坂図屏風』は、大坂夏の陣によって失われた豊臣時代の大坂城と城下町の研究に重要な手がかりをもたらしました。それから約20年後の2025年10月2日、日本の関係者2名がエッゲンベルク宮殿を訪問し、本屏風と対面。研究のきっかけを作ったバルバラ・カイザー博士と、トークセッションをおこないました。1時間半に及んだ本トークセッションの全文は、オーストリア大使館観光部の公式サイトにて公開しています。

オーストリア大使館観光部が主催した本企画では、滋賀県・竹生島宝厳寺住職の峰覚雄氏関西大学文学部教授の長谷洋一氏が、グラーツにある世界文化遺産のエッゲンベルク宮殿を訪問しました。

竹生島宝厳寺にある唐門(国宝)は、『豊臣期大坂図屏風』によって、豊臣大坂城の唯一現存する建物遺構「極楽橋」であることが確認されました。「極楽橋」は1600年(慶長5年)に大坂城から京都の豊国神社に、その2年後に琵琶湖の竹生島に移築されましたが、極楽橋以外の建物は大阪夏の陣で失われたため、極楽橋が描かれていること自体が、本屏風が豊臣大坂城を表したものであることの決定打となりました。分解されて壁紙に埋め込まれた屏風と初めて対面した峰住職は、「屏風が宮殿に違和感なく溶け込んでいたことに驚いた」と感想を述べました。

また、関西大学文学部の長谷教授は、関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター(現なにわ大阪研究センター)の研究員として、本屏風の研究に携わりました。やはり今回がエッゲンベルク宮殿初訪問となった長谷教授は、「もしかしたら他のヨーロッパの美術館に同様の屏風が存在するかもしれない。日本の若い学生たちに、ヨーロッパに流出している日本美術にもっと興味を持ってほしい」と話しました。

約1時間半にわたるトークセッションでは、『豊臣期大坂図屏風』を見出したバルバラ・カイザー博士と長谷教授、峰住職の三氏が登壇し、屏風がグラーツに伝わった経緯や、屏風の存在を知ったときの衝撃屏風の発見により実現した宝厳寺唐門の修復、そして未来への期待など、多角的な視点から熱い議論が交わされました。その全文は、オーストリア大使館観光部のウェブサイトにて公開しています。

また、今回の視察には公益社団法人びわこビジターズビューロー(滋賀県)の職員が同行し、グラーツ市観光局CEOディーター・ハルト=シュトレマイヤー氏、およびシュタイヤマルク州立博物館ユニバーサル・ヨアネウム代表のマルコ・メレ博士と面会。滋賀観光の魅力を紹介したあと、三者による観光相互協力の協定書への署名が行われました。なお、2021年の「オーストリアと琵琶湖の形が似ている」というSNSの投稿をきっかけに、滋賀県とオーストリアは交流を深めています。(参考資料:滋賀県公式サイト

江戸時代の製作とされる『豊臣期大坂図屏風』は、エッゲンベルク宮殿でバラバラに分解されて壁紙になるという一見不幸な運命を辿ったからこそ喪失を免れた、大変貴重な史料です。日本とオーストリアを結ぶ歴史的奇跡を、ぜひグラーツでご覧ください。

『豊臣期大坂図屏風』は、エッゲンベルク宮殿のガイドツアーに参加することで見学できます。開館時期は毎年3月末頃から10月末頃まで(冬季閉館)です。

エッゲンベルク宮殿の詳しい情報は、弊観光部サイト内「エッゲンベルク宮殿の七不思議」をご覧ください。

イベント概要

【日時】2025 年10 月2 日(木)13:00~18:00
【会場】エッゲンベルク宮殿(オーストリア・グラーツ市)
【内容】第一部:エッゲンベルク宮殿見学・築城 400周年記念展『シュタイヤマルク・ショー』見学/第二部:トークセッション『豊臣期大坂図屏風』/第三部:滋賀県とグラーツ市の観光交流

【出席者(敬称略)】
<日本側>宝厳寺住職 峰覚雄/関西大学文学部教授 長谷洋一/びわこビジターズビューロー 原田佳和、レイス有紀子

<グラーツ側>エッゲンベルク宮殿学芸員 バルバラ・カイザー/エッゲンベルク宮殿代表 パウル・シュスター/州立博物館ユニバーサル・ヨアネウム代表 マルコ・メレ/グラーツ市観光局CEO ディーター・ハルト=シュトレマイヤー

<独日通訳>原田紗希江

<主催>オーストリア大使館観光部 

【関連サイト】

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